GPSDO 10.0MHz基準周波数発振器を作る(8) 〜Allan Deviationを測ってみた

投稿者: | 2021/05/18

前回に引き続き、GPSDOの実力を確認してみました。
今回は、Stable32を参考に10MHzを1Hzに分周し基準の1Hzとの間隔(TIC:Time Interval Counter)を測定する方法を試してみました。

基準信号(Ref)と被測定信号(DUT)10MHzを1Hzに分周し、各々53132AのCH1、CH2に入力しTime Interval modeでRef_1HzとDUT_1Hzのエッジ間隔を1秒毎に測定します。

分周回路は74HC74とTC9122を使ってつくりました。2ch分です。中央のスペースは今後の回路追加用です。

TC9122は一個で1/3999分周設定可能なので74HC393等のカウンタよりICの個数を減らすことができます。ただし、あまり高い周波数では動作しないため74HC74で10MHzを1/2分周し5MHzをクロックとしました。(10MHzでも動作するとは思いますが、5V動作ではちょっと心配ですので5MHzに落としました)
また、TC9122の分周出力はDuty 50%ではありませんのでTC9122の出力は2Hzとし、最後に74HC74を通して1HzのDuty 50%の矩形波を得ています。
つまり、(1段目 74HC74) 10MHz /2 = 5MHz → (2段目 TC9122) 5MHz /1250 = 4000Hz → (3段目 TC9122) 4000Hz/2000 = 2Hz → (4段目 74HC74) 2Hz/2 = 1Hz の構成です。 また、74AC04で正弦波を矩形波(0-5V)に変換しています。TC9122は古いICですので、新品は入手困難かもしれません。私はAliExpressで購入しました。商品説明にはNewと書かれていましたが、どうみても基板から取り外した中古でした。まぁ、動作に支障が無ければ中古でもOKです。(偽物よりは絶対良いですね)

53132Aの測定結果はRS232C経由でログとして保存します。

測定は、以下の組み合わせで行いました。
(1) System noise floor: RefとDUTに同じ信号を入力して、このシステムの測定限界値を測定
(2) GPSDO-Rb(LPRO): DUTにルビジウム発振器を使用したGPSDO-Rb(LPRO)、RefにHPのDOCXO 10811
(3) GPSDO-MV89A: DUTにMorion DOCXO MV89Aを使用したGPSDO-MV89A、RefにHPのDOCXO 10811
(4) ATGM336H 5N31 1PPS vs GPSDO-MV89A: MV89Aを使用したGPSDO-MV89Aの10MHzを1Hzに分周し、GPSモジュールATGM336Hの1PPS出力を測定
(5) GPSDO-Rb(LPRO) vs GPSDO-MV89A: これだけTICではなく周波数測定値です。GPSDO-MV89Aの10MHzを53132Aの外部基準として、GPSDO-Rb(LPRO)の10MHz出力の周波数を測定。

これらの測定値からAllan Deviationをプロットした結果です。


TIC測定では、100秒ぐらいまで53132Aの性能による測定限界とGPSDOのAllan Deviationが重なっています。つまり、測定限界により性能を測定できていない可能性があるということです。
100〜1000秒では、TICによるAllan Deviationと周波数によるAllan Deviationはだいたい同じになっているようです。
つまり、53132Aでは周波数計測によってAllan Deviationを求める方が精度が高いということですね…と思っていましたが、Time-Nutsのアーカイブを読んでいると周波数カウンタはゲート時間で平均化されるので、TICで計測するべきだということが書かれていました。う〜ん。

短期安定度は測定限界のためOCXOとルビジウムでの差は出ませんでしたが、1000秒以上の安定度ではルビジウム発振器の方がすこし安定しているようです。10-13台がでてます。おおよそ2×10-12程度の安定度はありそうです。2000秒以降が少し上昇傾向にあるようにみえますが、周波数制御の間隔が安定した状態では約2000秒なためと、基準信号をフリーランで使用しているため基準信号が経時ドリフトしているためかもしれません。

また、ATGM336Hの1PPS出力のAllan Deviationは、4000秒で1.0×10-11ぐらいのようです。やはり短時間では精度は出だせないということがわかりました。GPSDOを基準として1PPS信号の変動をプロットした結果が以下です。

結構うねっています。推定周波数の表示は単調変化を期待しているため、この変動は周波数表示の誤差となります。
うねりの原因が何なのかははっきりしません。衛星の切り替わりで発生するという情報もあるようです。GPSとBeidou,GLONASの切り替わりでも発生するのでしょうか? 電離層や衛星の仰角による影響、マルチパスの影響もあるのかもしれません。

一方、GPSDO 2台の位相変動をプロットした結果が以下です。

単調変化になっています。これであれば、直線近似しても誤差の少ない周波数を求めることができると思います。この例では二つのGPSDOの間には63.5uHzの差があることになります。

u-blox M8Tのようなタイミングモジュールだとどのようになるのか試してみたいですね。ATGM336Hもパラメータ変更で改善できるのだろうと思いますが、まだ情報を見つけきれていません。

今回はTICによりAllan Deviationを測定しましたが、時間があればより精度が高いDBMを使ったDual Mixer Time Difference(DMTD)方式もやってみたいと思います。新たな遊びネタを得ました。なかなか奥が深い…(笑)

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